倉敷染をつくる人たち

山陽染工株式会社

1925年に広島県福山市で創業し、もうすぐ100周年を迎える山陽染工。染色加工の国内大手工場としてしられていますが、織布の中国紡織以外にも非繊維の関連会社を6社も持っている巨大グループ企業です。これまで倉敷染めには児島にある山陽染工児島ファクトリーとして参加されていましたが、23年3月末に児島ファクトリーを閉鎖することを契機として改めて本社が加盟されることになりました。福山市に本社を置く山陽染工が参加されたことで倉敷染めは岡山県以外への広がりを見せることとなるきっかけを得られました。今回は、営業部の武鎗正樹部長にお話を伺いました。

山陽染工株式会社
営業部 部長
武鎗 正樹

備後絣から始まった藍抜染の技術を伝える

岡山、広島はデニム産地として知られています。デニム生地から製品までを産地として一貫生産できるという特色があります。山陽染工はその産地にあって染色加工を担っていますが、産地内の他社と大きく異なる点は、まずインディゴ染料の生地染めができるという点。次に柄のプリントができるという点にあります。また、染めた生地から柄に合わせて色を抜く「抜染」という技術を得意としている点にもあります。

ご存知のように、デニム生地というのは、糸の段階でインディゴ染料で染めて紺色にしてから生地を織りますが、山陽染工ではこの糸染めの設備は無く、生地をインディゴで染める設備と技術があります。 これは創業の成り立ちに理由があります。

この一帯は元々が備後絣の産地だったことからデニム生地の産地に転じました。備後絣は藍で紺色に染めた糸で織る和装向けの生地なので、そこからインディゴ染めのデニム生地作りへと転じました。そんな中、創業者は糸染めよりも生地染めの方が効率的ではないかと考え、生地染めによる備後絣の製造技法と設備を研究しました。また備後絣は紺地に白い柄が入るのが特徴ですが、生地染めした後で白い柄を抜くために抜染の技法を研究しました。インディゴの生地染めと抜染は祖業そのものなので、これからも大事に次世代に継承していきたいと考えています。

インディゴ生地染めとプリント技術を武器に

よく、インディゴの生地染めについて通常のデニムとどのように違うのかと尋ねられますが、メリットとデメリットがあります。

メリットは糸染めのデニム生地と比べると、極端に言えば1反からの小ロット生産が可能な点にあります。また通常のデニム生地は中肉から厚地生地がほとんどですが、生地染めなら薄地のシャツ生地や麻生地に染めることもできます。実際にシャツ生地や麻生地のインディゴ染めの注文は多くあります。デメリットは通常のデニム生地よりもさらに色落ちしやすいという点です。アパレルやブランドはメリットとデメリットの両方を理解した上で、通常のデニム生地とインディゴ生地染めを使い分けてほしいと思っています。

巨大な水洗・乾燥設備が必要なので、原反のインディゴ染めができるのはおそらく国内工場では山陽染工だけでしょう。
また、福山・岡山のデニム生地産地の中では珍しく、柄のプリント加工ができるは山陽染工だけなので他の染色加工場との住み分けができています。
12色まで使用することができるロータリー捺染機での精密なプリントはもちろん、高い技術が必要な抜染・着抜染などを生地染めと複合で加工できるというのも大きな強みです。今までに蓄積された柄データは膨大で、迷彩柄など何年もリピートされている定番もあります。

海外進出もオリジナル製品もチャレンジできる社風

これまで9年くらい前まで山陽染工は賃加工の染色加工場として作業服関係からの受注や大手生地商社からの受注、寝装関連からの受注、中東向けのトーブなどを請け負っていました。しかし、賃加工だけでは見通しが良くないため、カジュアル向け販路を開拓する目的で児島ファクトリーをグループ企業として迎え入れました。また、自社オリジナルの生地販売も開始しました。
児島ファクトリーは残念ながら3月末で閉鎖になりましたが、そこで培ったノウハウとカジュアル向け販路を今後は本工場でも活かします。またオリジナルの生地販売ですが、グループ会社の中国紡織と合わせて生機から染色までの一貫生産体制を採っているところに強みがあります。

9年くらい前からこのような新たな取り組みを初めており、カジュアル向け販路も開拓してきましたが、国内需要は小ロット化し続けています。そこで5年ぐらい前から海外販路を開拓する目的でイタリアのミラノウニカ展示会に出展するようになりました。20年に始まったコロナ禍によって2年間休止がありましたが、23年2月には福山の篠原テキスタイルさんと共同出展しました。3日間で400点くらいのサンプルを海外企業にピックアップしてもらえたので手応えを感じ始めています。

新規事業としてはデニム生地とインディゴ抜染に特化したオリジナル製品ブランド「バッセンワークス」も3年ほど前から開始し、今年4月には「ももいろクローバーZ」さんにオリジナル企画のGジャンをライブ用に衣装提供しました。海外出展・製品ブランドとチャレンジを後押ししてくれる社風なので、さらに果敢に積極的に取り組んでいきたいと思っています。