倉敷染をつくる人たち

ニッセンファクトリー株式会社

倉敷市児島といえばジーンズで有名ですが、江戸時代には綿が栽培されていて、藍染から始まった綿の染色も盛んに行われていました。特に学生服など濃色の染を専門にする工場が多かったそうです。「うちの会社の前身も黒染めを得意とする染色工場だったんですよ」岡山県立倉敷工業高校の繊維課を卒業後、入社し2011年に会社を引き継いだ生粋の職人上り、ニッセンファクトリー株式会社の難波社長にお話を伺いました。

ニッセンファクトリー株式会社
代表取締役
難波 眞
岡山県倉敷市出身

生地染め工場から製品洗い加工、製品染め工場へ

ニッセンは終戦直後に創業した染色工場で、主に学生服に使われる硫化染料による黒染めを生業としていました。その後、高度経済成長の大量生産時代に入り、1960年代に国産ジーンズが誕生することで生地の染色工場からデニム製品中心の洗い加工場へと転身しました。大手ジーンズブランドからの受注を捌くために設備も大きくなりました。

洗い加工のバリエーションも多くなり、工程も増えノウハウも蓄積していきましたが、2000年頃からジーンズがファッションの中の1部分として見られ始めると、流行に左右されはじめ数も減少していきました。

そんな中で5年ほど前から製品染めに力を入れ始めました。余剰在庫を避ける流れもあり、コンセプトとして製品染めで作りたいというブランドさんもあります。製品染めには独特のアタリ感やこなれた感じがあるので、その雰囲気がいいとも言われます。

小ロット、多品種があたりまえになり、この春工場をよりコンパクトに配置転換して、サンプル作成や少量多品種に応えられるようリニューアルしました。

サスティナブルで注目されはじめた製品染め

できるだけ地域の素材を使って染めたいという想いから、倉敷染の取り組みで、コーヒー染めや墨染め、岡山県北の製材所から出る樹皮を使ったエシカル染を始めました。これは日本古来の草木染を応用したもので、媒染剤によって色の出方が違うところが面白いんですよ。

他にも農家さんや生産者さんから直接依頼を受けることもあり、この素材からどんな色が引き出せるんだろう?と楽しみながら取り組んでいます。新しい素材にチャレンジすることで「ここでしか出せない色」を大切にしたいと思っています。

2024SS企画では倉敷の桃農家さんの選定枝を使った桃染めや、児島湖のヨシを使ったヨシ染めにも挑戦しています。草木染をメインで担当をしているのは染色が好きでこの仕事に就いた女性スタッフで、時には一緒に畑まで染料になる材料を貰いに行ったりもしています。

これ、どうやって染めてるの?が喜びに

製品染めに特化し始めてからは、染料だけでなく技術的にも差別化を追及しています。昔ながらの技術を応用した板締め絞りや、絞り染めのほか、タイダイやぼかし染めのバリエーションも増えてきました。同じ技術でも複合させて順番を変えることで、出来上がりの見た目が大きく変わります。

インクジェットプリントも好調なため設備投資をして、5倍速でプリントできるようになりました。水を使わず、1枚から加工できるインクジェットプリント技術は、デザイン次第でいくらでも応用できます。新しいソフトウエアも積極的に導入して、デザインを刺繍のように変換したりとよりリアルでおもしろい表現も出来るようになりました。

染めと洗い、インクジェットプリントの複合を自社で出来るのが最大の強みで、技術に詳しいお客様が作ったサンプルを見て「これ、どうやって染めたの?」と言われると、心の中でガッツポーズが出ますね。

協業には無限の可能性があると実感

ずっと染色や加工をやってきて、技術にも知識にも自信がありますが、別の業種とのコラボレーションで、まだまだ知らないことがあると感じました。

昨年から始まった、北海道旭川市のクリーニング工場との協業で、お客様の古着を預かってインディゴ染めとチャコールグレーに染替えるプロジェクトでは、新品の洋服と違っていかに傷めないようにするかを求められたので、すすぎの温度やハンガーのかけかた一つについても、学ばせてもらうことが多かったです。逆には染めの知識や染料について、聞かれることもあってお互いに知識や経験・技術を交換できました。

倉敷染の取組みも、ある意味協業で、1社ではできないものづくりに繋がってきました。これからも同業種・異業種パートナーとの協業の機会があれば積極的に取り組みたいですね。