倉敷染をつくる人たち

コトセン株式会社

デニムに限らず、生地には整理加工という工程が不可欠です。整理加工をすることで表面を整えたり、縮みを防いだりします。ジーンズを洗濯機で洗ってもほとんど縮まずねじれないのは整理加工を施しているからなのです。織りあがったデニムの生地本来の良さを活かしつつ、縮みやねじれを防ぎさらに付加価値を上げるデニムの整理加工のスペシャリスト、コトセン株式会社の渡邉社長にお話を伺いました。

コトセン株式会社 渡邉社長

コトセン株式会
代表取締役
渡邉将史
岡山県倉敷市出身

倉敷紡績株式会社の協力工場として創業

コトセンが創業したのは1975年、クラボウさんの仕事だけを受ける整理加工工場として始まりました。ご存じかもしれませんが、倉敷紡績(株)は日本で最初の国産デニム『KD-8』を供給したトップランナーでした。その後、国産のデニム生地の量産をクラボウさんをはじめとする紡績3社が供給していました。他2社が一貫生産だったのに対し、クラボウさんだけは分業制。その結果、染色・織布・整理加工の各協力工場の技術がシビアに評価されて、どんどん磨かれていきました。

受注量は創業以降右肩上がりに伸び続け、1989年には加工最大能力は月産50万メートルになり、さらに設備投資をすることで1990年には加工最大能力は月産100万メートルにまで拡大しました。しかし、2000年頃からはジーンズメーカーの大量生産が減り始め、デニム生地生産が減り始め、キャパを埋めるために地場の企業の加工依頼も受けてよいということになりました。

地場での新しい関係づくり

それまで1社からの受注だけで成り立っていた工場でしたが、そこから新規の受注獲得のため営業活動を開始しました。幸い、児島の近隣の岡山県井原市周辺にはデニム生地の織布工場が今以上にたくさんありました。
すでにサプライチェーンが出来上がっている中での新規参入の営業で最初は苦労しましたが、「新しいものからでもコトセンに頼んでみようか」と、少しずつ注文をいただけるようになりました。現在では井原産地を中心に20社ほどからデニム整理加工の依頼をいただいています。

個性あふれる社長さんたちとの出会いは刺激が多くて、デニムの知識だけでなく、ものづくりに対する考え方や経営者としての生き方について、ほんとにたくさんの事を学ばせてもらえました。
創業当初から『世界に通用するクラボウデニム』専属の協力工場として技術力を高めていたからこそ、他社からの信用を得ることが出来ました。今では海外でも評価の高いクラボウデニム。協力工場としての役割を今後も大切にしていきたいです。

ニッチな分野だからこそ特許を取得

整理加工という工程は必要不可欠なのですが、地味な仕事です。どんなことができるのかを明確にすることと、自社の優位性を確立するために、技術開発を続け、2006年に自社オリジナルの整理加工技術、「MC加工」と「熟成加工」の2つの特許を取得しました。
「MC加工」はデニム生地の表面にアルカリ処理を施す加工です。そうすることで、デニム生地の綾目が際立ちます。さらに表面には光沢感やシャリ感が付与されます。この加工はストレッチデニムに適していて、現在の市場ニーズにもマッチしています。
「熟成加工」(XB加工)は「より古く見せる」ための加工です。インディゴ染料は空気に触れることで紺色に染まりますが、長い年月が経てば変色します。本物のビンテージジーンズは少し緑が混じったような色合いになっていますよね、あれが経年変化による変色です。熟成加工は新品のうちにこの色合いを再現する独自の技術です。

特許を取得するということはレシピを公開することになります。そんなことをすればオリジナルの技術もすぐに真似されるのでは?と思われるかもしれません。しかし工場はそれぞれ技術力も、使用している機械類も異なります。そのため、同じレシピを使っても、まったく同じものは出来ないので、何も問題はありません。これは整理加工だけのことではなく、染色や織布全ての工程に通じることだと思います。

次世代を巻き込んだものづくりを

社長になって4年、ものづくりはカッコいいんだよ、楽しいんだよ!ということをずっと伝えてきました。これからを担う世代にとって、もっとやりがいのある仕事にしていくためにどうしたらいい?という問いを今、社員たちと真剣に考えています。

倉敷染についても、周りの方から「良い取り組みだね」と言われることが増えてきました。自分ができることをしっかりしながら、1社でできないことをやっていきたいですね。技術を伝え、次世代を巻き込んだ柔軟なものづくりができれば、産地の素材、日本の素材がもっと世界で評価されると信じています。